常設展示室 1F 1999 MOMASコレクション 第1期

1999.10.5 [火] - 12.12 [日]

日本画の魅力

膠(にかわ)、顔料、墨、絹、紙を用いる日本画は、繊細な画材を活かした画法ならではの特色を備えています。水溶性で重ね塗りに向かないため、着彩は平坦ですが、顔料の細かい粒子がやわらかな輝きをたたえた独特の質感を持っています。また熟練した線描は、柔剛、粗密を巧みに使い分け、輪郭線による立体表現や自在で表情豊かな空間描写を可能にしています。
自然環境や生活感覚がへだたる現在の私たちにとって、掛軸や屏風といった形態はその意味を肌で感じにくく、あるいは人工照明のもとで見る顔料の質感は異なっていることでしょう。しかし、ほかの画材からは得られない独特の味わいが、今でも多くの画家や鑑賞者の心をひきつけています。今回は近代の日本画の作品を通して、その魅力をご紹介いたします。
また今回の展示では、鈴木い祢氏から寄贈された全作品を公開し、ご厚意に応えたいと存じます。鈴木氏からは平成7年度および11年度に、あわせて27点の名作を当館のコレクションに加えていただきました。中核をなすのは近代日本画と、簡素な形と明快な色彩によって独特の味わいを持つ熊谷守一の油彩画です。とりわけ横山大観や前田青邨は埼玉ゆかりの日本画家に関わりが深く、日本美術院の歴史をたどる上には欠くことのできない作家です。これらの主要な作品によって一層充実した展示は、ご来館の皆様にも堪能して頂けることと存じます。
このほか、埼玉県立近代美術館が収集しているモネやピカソなどのヨーロッパの近代絵画や、版画も展示いたします。

会期

1999.10.5 [火] - 12.12 [日]

観覧料

無料

小村雪岱《見立寒山拾得》

森田恒友《水村訪友》1932年頃

MOMASコレクションロゴ

埼玉県立近代美術館では、2008年度より「常設展」という呼称を「MOMASコレクション」に改めました。当館の常設展では2002年度以降、外部からの借用作品や現存作家のご協力によって、所蔵作品を核としつつも従来の常設展のイメージに捉われない、企画性の高いプログラムを実施してきました。名称変更はこうした意欲的な姿勢を示そうとするものであり、これまで以上に充実した展示の実現を目指しています。

※MOMAS(モマス)は埼玉県立近代美術館(The Museum of Modern Art, Saitama)の略称です。